養蚕業の現状

山鹿市(やまがし)は、熊本県北部に位置する人口約5万人のまちである。豊かな自然を活かした農業が基幹産業となっており、米、スイカ、メロン、キンカン、栗、タケノコ、茶、椎茸などが生産されている。

そんな山鹿ではかつて、農家の貴重な現金収入源として養蚕が盛んに行われていた。山鹿は、江戸時代に養蚕の普及発展に貢献した「カイコの神様」島已兮(しまいけい/生年不詳~1796)や、明治時代に熊本での近代養蚕業を確立した長野濬平(ながのしゅんぺい/1823~1897)の出身地でもある。

しかし、昭和初期に約7万軒もあった熊本県の養蚕農家は次第に減少していく。要因は化学繊維の普及や農家の高齢化などだった。戦後は生糸価格も低迷し、「寝る間もない」と言われた過酷な養蚕業を営む農家はさらに減少した。2024年2月現在、熊本県全体で養蚕を営む農家は、山鹿市の2軒を残すのみとなっている(大日本蚕糸会「国内蚕糸統計データ」2024年2月9日更新分より)。