近年注目のシルクパウダー

近年注目のシルクパウダー

「食べるシルク」。近頃よく耳にする言葉ですね。

軽くて柔らかく、温かくて美しい絹は、数千年前から高貴な衣料素材として世界中で利用されてきましたが、絹には抗菌性,吸湿性,放湿性,保温性,紫外線カット,静電気防止等の機能があり、近年はそれらの機能性を生かした食品や化粧品分野での利用が大幅に増えています。

ここでは絹糸から作られる食品や化粧品について説明します。

蚕が吐き出した絹糸の九五%はフィブロインおよびセリシンと呼ばれる二種類のタンパク質で構成されています。

フィブロインのまわりをセリシンが取り巻いているという構造です。

シルクの新しい利用法としては大きく三つに分類できます。

①シルクのフィブロインをペプチド或いはアミノ酸レベルまで分解して利用する。

これは、シルクからまず表面のセリシンを除去した後、塩酸か酵素を使って分解するものです。

シルク由来のアミノ酸が肝機能強化、コレステロールの低下、脂肪燃焼の促進などに力を発揮すると言われています。

②シルクのフィブロインをそのまま利用する。

東京農業大学の長島孝行准教授によると、フィブロインは多孔性の構造を持っているので、油脂を物理的に吸着し消化吸収しにくくする作用や、食物繊維様の働きなどで中性

脂肪の低下、血糖値の低下、肝機能の向上が期待できるそうです。

③シルクの表層を覆っているセリシンを利用する。

本来シルクの外側を覆っているセリシンは、糊のような役割をするタンパク質で、水に溶けやすいため、通常はマユから絹糸を作る過程で溶けてなくなってしまいます。このため衣料用の絹糸はフィブロインだけで構成されています。

最近の研究で、このセリシンが人間の皮膚に最も近い成分で構成されていることがわかったので、主に化粧品の分野で利用されるようになりました。

これら三つの物質の総称として「シルクパウダー」と呼ばれています。

シルクを液体化しフィブロインだけを分離させ、乾燥粉末化したのが「シルクパウダー」です。このシルクパウダーを混ぜたうどんやそば、せんべい、あめ、クッキー、ゼリー、おかゆ、豆腐、ワインなどが非常に好評です。

シルクには蜂蜜同様に良質のアミノ酸が豊富に含まれています。

特にグリシンが多量で、その次にアラニン、セリン、チロシンなどが多く含まれています。グリシンとセリンは血液中のコレステロール濃度を低下させる作用があります。

アラニンは肝臓機能を強化しアルコール代謝を促進します。チロシンは痴呆症予防に効果があることで知られています。

フィブロインは高分子量の繊維状タンパク質なので、食物繊維と同様に腸の働きを正常化する作用もあります。

シルクパウダーには絹のような歯触りや、こしの強さを与える効果や甘みを出す効果もあるので、うどんや豆腐などにも好んで使われるのでしょう。また、シルクパウダーを水に溶かした「シルクウォーター」なども製品化されました。「シルクウォーター」はさしずめ「飲む化粧水」と言えるでしょう。

シルクにはセリシンというタンパク質も含まれているのですが、これは絹糸にする過程で洗い流されてしまうので有効利用するのは非常に難しいものです。

セリシンには皮膚を保護する保湿成分や紫外線を遮断・吸収する機能があるので衣料業界では絹糸処理液からセリシンを抽出して繊維に付着させる技術を開発し、これを利用した下着や寝具、水着などが大手メーカーから発売されています。

この水着を製造しているメーカーには、アレルギー性の肌の方から問い合わせが殺到しています。

中東の女性たちがシルクのベールで身体を覆うのは、単に宗教的な理由だけでなく、強い紫外線から肌を守るための生活の知恵なんですね。

シルク成分は肌や毛髪に対する吸着性が優れていて、痛んだ髪や肌をコーティングし保護します。

ですからシルクを化粧品に利用する動きも活発です。

基礎化粧品はもちろんのことファンデーション、口紅、アイシャドーなどが製品化されており、そのほかシャンプー、リンスも販売されています。

紫外線や大気中のほこりなど外部の様々な刺激から肌を守り、毛細血管の収縮と汗の分泌を通して体温を一定に維持する機能を持つシルクは、もはや着るだけの物ではありません。

目的に応じてシルク成分を上手に摂れば、健康・美容・ダイエットに大きな効果を発揮することでしょう。