お蚕さんの豆知識
蚕(かいこ)のはなし*完全変態する昆虫
蚕(かいこ)は蛾(が)の幼虫であり呼び方は1頭と呼びます。卵から幼虫が出ることを「孵化(ふか)」 といいます。
早朝・夜明けとともに始まり、幼虫の期間はおおよそ25日位です。幼虫が最も成長するのは羽化時(幼虫がさなぎになる)で1万倍の大きさになり、体長は25倍にもなります。大きくなったカイコの体の中には絹糸腺(けんしせん)という一対のタンパク質の製造工場があります。
桑の葉を食べ、その中にふくまれるタンパク質、アミノ酸、炭水化物などを材料として、絹糸腺という器官に取込み、フィブロインとセリシンという絹のもとになるタンパク質を作ります。 この工場ことを「繊維の女王・シルク」のふるさとです。
カイコの顔の真ん中には、エサを食べる口と糸を吐き出す口の2つがあり、糸の吐き出し口のことを吐糸口(としこう)と呼びます。糸を吐く早さは、1秒に0.5〜1㎝で、太さは、0.02ミリほどの太さです。だんだん繭の層が厚くなっていきます。約2昼夜を費やして、1,300〜1,500mにおよぶ繭糸を吐き繭を作り上げます。繭は8の字やS字に吐くとよく聞きますが、実際には糸の先を周りにはりつけて足場を固定してから、頭をㇵの字に動かしながら糸を引き吐き出しています。
からだから引き出される時に、糸が細くなり、からだの中で液体だったものが繊維化して糸になります。また、糸を引き出す時の強さや角度の違いが糸の性質に変化を与えます。左右の絹糸腺(けんしせん)で作られたフィブロインは、セリシンで表面を被われ一本の糸となります。一本のフィブロインは、さらに細いフィブリルのたばで作られ、そのフィブリルもさらに細いミクロフィブリルのたばでできています。この、たくさんの糸のたばでできていることにより、独特のかがやきや、やわらかさが生まれます。しなやかなフィブロインの束(たば)のなかに、無数のプリズムがあり、複雑に屈折(くっせつ)が変化するので、やさしい光沢になるのです。
蚕1頭が幼虫期間中に食べるクワの葉は約21グラム~25グラム。幼虫が繭(まゆ)を作るまでに4回の脱皮をします。繭1粒の重さは約2gで、約0.4gの生糸がとれます。(繭の色は、白・緑・薄紫色などがあります)糸を吐き終わったカイコは2~3日で蛹(さなぎ)になり、約10日で成虫(蛾)になります。卵は約2週間後にかえるものと、次の春までかえらないもの(1化性)があります。蚕はウイルスやカビに弱いので清潔な環境で生育させる必要があります。1頭の蛾は約500粒の卵を産み、蛾は飲食せず、1週間程度で一生を終わります。