蚕を使った天然抗生物質

蚕(カイコ)の多目的利用に関する研究においては、世界のトップレベルにある韓国で2013年に、蚕を使った家畜用の天然抗生剤が開発されました。

 近年、ニワトリや豚、牛など家畜への抗生剤使用が多くの国で規制されていて、規制の対象はこれからもどんどん拡大されていくものと予想されています。

そんな中、韓国の政府機関である農村振興庁は、蚕を利用して、家畜の免疫力と生産性を向上させられる飼料添加用の天然抗生剤を開発しました。

 蚕の体内に病原菌が侵入すると、強力な抗生物質である抗菌ペプチドを大量につくり病原菌から身体を防御します。この原理を利用して、ニワトリの免疫力と生産性を向上させることができる飼料添加用の天然抗生剤が開発されました。

 現在では体内に天然抗生物質を持つ蚕の大量生産に成功し、安価な飼料添加剤(粉末)として養鶏農家に供給できるようになりました。

 厳密にいえばこれは抗生剤ではなく、抗生剤の代替物と呼べる物質です。

 蚕から作られたこの飼料添加物を、既存のニワトリ飼料に0.01%だけ添加し5週間後に比較検討したところ、添加剤を与えたグループでは、体重は3.7%増加しました。これはニワトリに与える飼料を4.5%節約できることになります。

 免疫力がどれくらいアップしたかを検証したところ、ニワトリの盲腸内に存在する大腸菌は4.3%減少、生卵の摂取で問題となるサルモネラ菌は9.8%も減少しました。

 またニワトリのストレス度合いを測る指標ホルモンのひとつ、コルチゾールの血中濃度は37.2%も減少しました。

 蚕の多目的利用はまだまだ広がっていきそうですね。