蚕を原料にした「シルクタンパク質食品」や健康素材が注目!

◆蚕を原料にした「シルクタンパク質食品」が注目されている背景には、単なる昆虫食の流行ではなく、「蚕が持つ特殊なタンパク質の性質」と「日本の養蚕技術の蓄積」が結びついた、新しいバイオ・食品分野の発展があります。

◇まず重要なのは、蚕は非常に優れたタンパク質源であるという点です。
・蚕の繭はほぼ100%がタンパク質でできており、主に「フィブロイン」と「セリシン」という2種類のシルクタンパク質で構成されています。これらは不純物が少なく純度が高いため、食品素材としても利用しやすい特徴があります。

・特にセリシンは、もともと絹糸を作る際に除去されて廃棄されることが多かった成分ですが、近年の研究で健康機能が注目され、パンなどの食品に添加することで効率よく摂取できる素材として提案されています。

◇近年、日本のスタートアップ企業などが開発しているのは、このシルクタンパク質を粉末にした「シルクプロテイン」です。この粉末は見た目や風味が抹茶に似ており、飲料やプロテインシェイクとして摂取できるように加工されています。

栄養面では、シルクタンパク質にはフィブロインやセリシンのほか、桑の葉を食べて育つ蚕に由来するポリフェノールやDNJ(1-デオキシノジリマイシン)などの機能性成分が含まれています。これらは食後の血糖値の上昇を抑える作用や腸内環境の改善に関与する可能性があるとされており、予防医学や健康維持の分野で注目されています。

◇さらに、スポーツ栄養の分野でも利用が始まっています。
・従来のプロテインは牛乳由来のホエイや植物由来の大豆が中心でしたが、蚕由来タンパク質はこれらの代替または補完として使われています。
・蚕のタンパク質を配合したプロテインは、高タンパクでありながら環境負荷が比較的低く、従来のプロテインと同様にシェイクなどの形で摂取できるようになっています。

◇この分野が特に日本で注目されている理由の一つは、
・日本が長い養蚕の歴史の中で「蚕を高効率に育てる技術」を蓄積してきたためです。蚕はタンパク質を大量に生産する能力が非常に高く、この特性を利用すれば、安定して高品質なタンパク質素材を生産できます。

・また、蚕は桑の葉だけで育つため、飼料の管理がしやすく、トレーサビリティ(生産履歴の管理)も比較的容易です。これは食品素材として重要な安全性の面でも利点となります。

◇このような研究や商品開発の背景には、将来的なタンパク質不足への対応という大きな目的があります。
・世界人口の増加により、従来の畜産だけでは十分なタンパク質供給が難しくなる可能性が指摘されており、昆虫を含む「代替タンパク質」が世界的に研究されています。
・蚕はその中でも、すでに家畜化され、人間との関係が長く、安全性の研究も進んでいるため、有望な素材と見なされています。

◇まとめると、蚕由来のシルクタンパク質食品は、単なる昆虫食ではなく、「高純度で機能性のあるタンパク質を効率よく生産できる生物」としての蚕の特性を利用した、新しい健康素材です。
・日本では養蚕の伝統と先端バイオ技術が組み合わさり、プロテイン、機能性食品、サプリメントといった形で実用化が進んでおり、今後は医療や栄養分野でもさらに重要な役割を担う可能性があります。